
今回は、特別養護老人ホームへの入所対応とそこから得られた教訓についてお話しします。
【特別養護老人ホームへ入所】
①母は、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を患い、公立病院で安静にし解熱と体調の安定を待っていました。
ある程度体調が安定したところで、入所申請していた特別養護老人ホーム(特老)から空きができたので入所が可能な旨連絡がありました。
そこで、受け入れて頂ける特老に入所させることとしました。
入所手続きの際に、施設の関係職員が集まり入所にあたっての注意事項の説明がありました。また、父と弟の同意を得て、医療や命に係わる治療対応
についての誓約書を提出しました。記入の際は、母が脳梗塞で倒れる前に常々話していた「延命治療はしなくてよい」を基準として検討しました。
コロナ感染がまだ盛んな頃の入所となり、面会は施設の外からガラス越しに行うものでした。母の意思表示がなかなかうまくできない状態に加えてガ
ラス越しのコミュニケーションは、仲立ちの職員の方のおかけでなんとかとれていたような状態でした。
②入所後しばらくは母の体調は安定していましたが、再び、誤嚥性肺炎を発症してしまい、公立病院へ入院することとなりました。
飲み込み機能が低下し、ゼリーによる栄養摂取が困難となりました。医師からは胃ろうによる栄養摂取の方法が提案されました。
特老へ入所の際の誓約書への記入の際に基準とした母が生前常々話していた「延命治療はしなくてよい」をここでも基準として、
父と弟で話し合いをしました。
胃ろうとは、おなかに胃に栄養を入れる拠点をつくり、胃に直接栄養分を流し込む方法です。この方法をとると確かに命はつなげます。しかし、飲み
込み機能や体の機能、言語機能の回復の見込みはありません。そこで、胃ろうをして体の機能が回復すれば胃ろうを行うが、回復する見込みがないこ
とから胃ろうはしないこととしました。胃ろうをしないため、栄養分の供給はほとんどできす、点滴による水分補給を病院側にお願いしました。
③容体が安定したため、再び、特老に戻ることとなりました。施設に戻った際に、施設の関係職員の方が集まり、母への今後の医療・介護対応につい
て、確認がありました。今後は、誓約書において、病院での治療は行わず施設内対応とする見守り介護に移行することにサインしました。
この頃になると、コロナ感染による面会規制も緩和され、毎日午後に約15分面会していました。ゼリーによる食事は施設の方の配慮により、誤って
肺に食べものが入らないような姿勢を検討して頂き、その姿勢で何とか食べることができるようになりました。しかし、本人の食欲がだんだんなくな
り、面会で母に会うと、だんだん弱っているように思えました。施設と提携している医師からもあまり長く生きられない旨伝えられ、いつ亡くなって
もおかしくないと覚悟しました。
【教訓】
①【特に高齢者においては突然の脳梗塞などの病気により意思表示が不明確になり、対応する家族の者は本人の意思の反映に苦慮する。】
上記の事例の場合、幸いにも生前から常々、病気となった場合は「延命治療はしないで欲しい」と話していて、老健の医療・介護を受ける際の基準と
して使うことができました。仮に常日頃のコミュニケーションがなければ、本人の意思を反映した対応が困難になると思われます。親子の常日頃のコ
ミュニケーションが別居により取りづらかったりする場合には、エンディングノートなどに医療・介護の受け方を記入しておき、いざというときの備
えとする方法が考えられます。
②【意思表示できない人の考えを医療に反映させるには、事前にその方の考えを把握しておく必要がある。】
上記の事例の場合、胃ろうの手段を選択するか否かを判断する際に、「延命治療はしないで欲しい」が基準となり、その手段により単純に延命の場合
は延命治療、体の機能が回復するなど何らかのプラスが伴い延命する場合は延命治療でないと、父と弟との話し合いで治療方針を決めました。事前に
把握できていない場合は、エンディングノートなど本人の意思を反映したものを参考とすることになります。それもない場合は、残念ながら本人の意
思を推測しての判断となります。
③【あきらめなければ、専門家の対応で食事を取ることができる】
上記の例では、、母の食事摂取の方法で、単にゼリー食べてもらうことは誤嚥の可能性がありますが、誤嚥の生じない姿勢を検討し、それを実行する
ことにより栄養補給ができました。医療施設では、今後、点滴による水分補給しかできないと思っていましたが、特老の職員の方々の尽力により栄養
補給が実現し、有難いことと思いました。
④【特別養護老人ホームの利用料は、対象となるものは介護保険により所得に応じて原則1割を自己負担し、対象外となる食費なども自己負担する】
施設利用の精算は、月締め翌月払いでありましたので、1回目の請求で翌月以降の請求額の目途がつきます。母の現預金の範囲内で済むのか、
済まない場合はどのように負担するかを検討しなければなりませんでした。幸いにも現預金の範囲内で済む見通しを確認しました。但し、想定よりも
長期となる場合は、現預金の残高がないため家族からの負担となることを念頭に入れました。
~ 次回(最終回)は、死亡・葬儀・供養・相続の場面のお話しをします。12月19日を予定しています。
